研究科長からのメッセージ

理学、工学から農学まで
-自然を究(きわ)め、持続可能な明日を創(つく)る-

 


自然科学研究科長 伊藤文彦
 
自然科学研究科博士前期課程は、平成30年度に創設された研究科で令和5年度で6年目を迎えます。理工学、環境システム科学、農生命科学の各専攻を配置し、自然科学に関わる幅広い学術・技術の教育研究を進めています。

いま皆さんの周りに存在する科学技術は、多くの人々の活動によって創られてきたものです。現代のコンピュータは、その基本的なアーキテクチャを考案した科学者の名前を取って、「フォンノイマン型」と呼ばれています。そのアーキテクチャを実装し、今日の性能を実現するには、半導体工学の結晶である大規模なLSIが必要でした。MacやWindowsなどのユーザインタフェースは今では当たり前ですが、登場したときは画期的なものでした。スマートフォンと呼ばれる、ポケットに入れて持ち歩けるコンピュータのアイデアは、私たちの生活を一変させました。科学技術は、それらの「作り手」とともに、それらを享受する人がいて初めて完成します。科学技術を享受し、また、それに対する批評を意識的に、または無意識にでも発信することで、「使い手」は科学技術の進化に加担しています。

大学院に入学することは、そのようなコミュニティに「作り手」としても参画することを意味します。運が良ければ、何年か先の未来を一変させてしまうアイデアの創出に立ち会えるかもしれません。反対に、皆さんが発信した成果は、一瞬のうちに否定され、新しい発想に置き換わるかもしれません。科学技術に限らず全ての文化は、多くの人々が作り上げてきた伝統の上で、多くの人々が持ち込む作用によって千変万化を繰り返しています。その変化の一端でも、当事者として楽しむことが、大学院で体験できる最高の学びだと思います。

研究室では、研究テーマに果敢に挑戦してください。大抵は上手くいきません。簡単に上手くいくテーマに大したものはありません。諦めたらそこで終わりです。諦めなければ失敗とは言いません。上手くいかない方法を見つけたなら、それを後輩に伝えて後を託しましょう。人類はそうやって進歩してきました。自然科学研究科には、理学、工学、農学に渡る多様な課題に取り組む研究者、学生がいます。人類が持続可能な社会を維持していくためには、異分野の人たちの知恵の集約が必要です。外国からの留学生もいます。学会への参加や、留学のチャンスもあります。多くの人と交流してください。新しい視座が見つかることでしょう。

それらの経験の全ては、皆さんの人生の中で巨大な財産になると信じています。

 

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